新機動戦記ガンダムW 第45話「決戦の予感」 感想・レビュー

＊現在サンテレビにて再放送中の番組です。関西以外在住の皆様は、バンダイチャンネル他をご利用の上、視聴の機会を得られれば、大変幸いです。





　ヒイロによるリーブラカチコミフラグが建立されていく一方、着々と最終戦争のお膳立ては進行するものでした。
　有無を言わさず地球全土から戦力兵力を掻き集めねばならぬ理由をゼクスが支度し、それを扱うだけの素養をトレーズが有していた。
　地球圏全てを巻き込んだ壮大な“学び”が齎す結果は、悪しきものでは無かったと思いたい所です。
　唯他所が腐敗の果て壊死するとか、“9割9分の死滅の後で再起”と言う底辺所では無い有様なので、何の参考にもならんと言うか（汗




『カトル、何やってるんだ？』

『ゼロシステムを外してるんだ、僕にはこのシステムはもう必要ないんだ・・・大丈夫！コレが無くても僕は戦えるよ！』


　前回の交戦によるリザルトと言うか始末から本話は開始されますが、全力航行に支障がある程度でピースミリオンはピンピンしている有様。


『ヒイロ、お前もあんまり無茶すんなよ？扱える様になったって言っても、ゼロシステムが危険なのは変わりないんだからな？』

『・・・ああ』

『なっ・・・珍しく素直だなぁ？』


　ガンダム各機の損害もそこまで大きくは無く、本来ならヒイロ達の手も借りる程では無い程度だった模様です。


『こらぁお前達？！整備はメカニックの仕事だと言っとるだろうが？！休める内に休んで置くのもパイロットと務めじゃぞぉ？！』


　・・・名も無き船外作業員が多数奮戦している事からも、ハワードが擁するクルー達の総数・練度・士気も相当なものである事が察せれます。



『資源衛星MO-II。現在は採掘作業も終わり軌道上に放置されている・・・前線基地としてはうってつけのポイントだわ』

『このモビルスーツの数・・・世界国家は、地球に存在する全ての兵器を此処に集結させている』

『そうみたいね、よくもこれだけの数が集められたものだわ』


　お蔭でリーブラの進撃速度は増々落ちたものであり、これ幸いとトレーズ側は招集した兵力を殆ど宇宙へと移送。


『トレーズ・クシュリナーダは本気でこの宇宙で決着をつけるつもりなのかしら？』

『解らない、しかし今までのやり方では無いのは確かだ・・・一体、“あの人達”は何を考えている？？』

『ノイン・・・』


　廃棄された資源衛星「MO-II」を仮設前哨基地へと仕立て上げ、戦支度を終えんとしていたのです。


『いよいよ長い戦いに終止符を打つ時が来た。武力をもって平和を乱す元凶である、ホワイトファングを排除してこそ、地球圏に真の安息が訪れる・・・兵士諸君、平和と秩序の為に、全力で戦う事を期待する』

『『『はっ！！！』』』


　・・・こうなって来ると、逆に戦力をモビルドール頼み過ぎて、マンパワーが圧倒的に不足しているホワイトファング側には焦りすら生まれるものでした。



『・・・ミリアルド司令、ガンダムの方は一体どうするのですか？』

『放って置け』

『司令？！』

『ピースミリオンの損害は大きい、直ぐには動けない筈だ』


　平然としているゼクスはそれすら織り込んでいるものですが、この段階のカーンズはそうにもいかなかった。


『しかしこのまま放置して置く訳にはいきません！象徴であるべきガンダムはエピオン一機で良い、我々の理想を“挫く可能性のある”ものは早く消滅させるべきです！』

『出来るのか？？』


　5柱もの悪魔の不敬を買って、心穏やかで居られる筈も無いと言うのは解らないにせよ、真正面から彼等と相対するには覚悟も組織力も足りて居なかった。


『既に、モビルドール部隊を向かわせました。必ず落とします！』

『・・・指揮は任せた。好きにすれば良い』


　その上でまんまとゼクスの誘いに乗る形で、更なる出血を余儀無くされた挙句・・・人手不足を突かれて蛮勇が過ぎる鼠一匹に入り込まれる等、今話の彼等には良い所は無しです。




『どうしてお兄様は、友であった人と話し合いでは無く、戦争と言う手段を取るのかしら』

『それを御二人が望んでいらっしゃるからよぉ』

『え・・・』


　カーンズが無駄に戦力を差し向けつつある中、ドサクサに紛れてまんまと潜入したのは・・・何とヒルデ。


『リリーナ様にはあの方達の気持ちは理解出来ないの・・・でも、“それで宜しい”んですわ』

『ドロシー・・・』


　流石に足が付く輸送船を独りで支度したとは考え辛いので、抵抗組織で貧乏籤を自分から引きに向かったのやもしれません。


『・・・同じパイロットデータのモビルドールとガンダム、戦ったらどっちが勝つのかしらぁ？』

『ヒイロは負けません』

『？！』


　どちらにしても、デュオの孤軍奮闘ぶりを遠くの関わり無き事である、等と他人事にするには余りに手遅れであり、彼女の善性は生存本能を退ける様な形で、無理無謀を促してしまった形です。


『そ・・・彼、強いものね・・・では私、仕事がありますからこれで失礼致します。リリーナ様は存分に御覧になって下さい』

（ヒイロ・・・）


　戦いの場の熱気はそうした魔力がある。
　何もせずじっとする事に、寧ろ苦痛と罪悪を覚えてしまう程に。


『貴女、ガンダムのパイロットを知っているの？』

『え・・・？！』

　・・・唯それだけでも無く、ヒルデもデュオと似たり寄ったりの背負い込み気質か、ドロシーに連れ回されていたリリーナを目撃してしまっています。
　挙句、絶対的な戦力を前に言葉は無意味だとか知らしめたかったか、ドロシーが置き去りにした途端に接触に成功したのです。
　それを咎めぬ辺りホワイトファング共の人手もまるで足りて居ない、と言うかリーブラそのものが過ぎたる規模と言うか。




『そう、貴女もガンダムのパイロットを知って居るのね・・・私は、彼等の様に強く無いわ、一緒に戦う事は出来ない。だけどやれる事は有る筈よ』

『貴女は十分に強いわ・・・でも私には何の力も無いのかもしれない・・・』


　もっとも、御互いガンダムのパイロット達に色々狂わされた事くらいしか、リリーナとヒルデの間では交わされる事も無かったもの。


『兎に角、此処に居るのは危険です、直ぐ脱出した方が良いわ』

『えぇそうするわ、折角入手した“リーブラのデータ”届けなくちゃ・・・貴女も一緒に行かない？そのガンダムのパイロットに会いたいんでしょう？』

『いいえ、それは出来ないの・・・私にはまだ、やる事があります』

『そう、じゃ行くわ・・・貴女の名前は？』


　しかしリリーナが囚われ・・・もとい自らの意志でリーブラに残って居る事実を。



『リリーナ・ピースクラフトです』

『あっ・・・気を付けてね』

『貴女も』


　見事生還して伝達した事は、言っちゃ悪いですが持ち出した艦内情報よりやや上の大事でした。



『何事だ？！』


『第五格納庫のハッチが破壊されました！トーラスクルーザーが出ます！』

『何脱走か？！』


　勿論此処から先の脱出劇は平坦なものではありませんでしたが、足としてトーラスはおろかトーラスクルーザーまで拝借出来る辺り、警備がザルにも程がある。


『あのトーラスクルーザー、真っ直ぐピースミリオンの方へ向かってるわねぇ？』

『？！直ちに追撃するのだ、ビルゴを出せ！！』

『ビルゴでは駄ぁ目』

『え？！』


　それもこれもカーンズが無意味にヒイロ達にちょっかいかけたせいと言う嫌な因果があるものですが、もう一回言いますが怒れる死神だの龍だのに背を向けておちおち戦争なんて出来る訳が無いのだから・・・。


『“メリクリウス”と“ヴァイエイト”を出すのよ、必ずガンダムが来る筈です』

『指揮は私に任されている！口出しは控えて頂きたい・・・これは子供の遊びでは無いのだ！』

『そうよ？戦争ですもの？』


　唯哀れな事に、カーンズはドロシーに踊らされて更なる損害を出す羽目になります。
　ビルゴIIでは速力及び判断能力に劣る事もあって、虎の子の再建造機を差し向けたものの・・・それはよりにもよってヴァイエイトとメリクリウス。
　加えてヒイロ及びトロワの戦闘データをぶち込んだ特別仕様のモビルドールだったのですが・・・。




『ふぅん、良い手だな』

『攻撃こそが最大の防御だ、守る事ばかり考えていると身動きが取れなくなる』

『為になるご意見ありがとさん♪』


　まあ、正直言いましょう。
　クソ度胸はともあれ、候補生レベルの技量しか無い筈のヒルデを秒殺出来ない段階で、豚に真珠も良い所なバ改造だったのではと・・・。


『ピースミリオン攻撃部隊、ガンダムとの戦闘に入りました！』

『メリクリウスとヴァイエイトは？！』

『間も無く目標を射程内に捉えます！』

『ようし！何としてもガンダムと接触する前にトーラスクルーザーを撃破しろ！！』


　これならガンダムパイロットの候補生落ちした“姉妹”の方が余程働いたもの・・・尚彼女達は同時期別コロニー死守を、同じく再建造機「シュヴァイン」で試みていた事が数年前新たに発覚した様ですがそれはさておいて。


『くうぅちっとも数が減らないぜ！』

〈ピースミリオン！〉

『ん？！』

〈ピースミリオン！聞こえますか？！〉

『こっ、この“声”は？！』


　結局ピースミリオンへの連絡を果たせる距離までにヒルデ撃墜を果たせぬまま、最前線でビルゴ共を撫で斬りしていたデュオに事が知れてしまったのです。


〈お願い！返事をして、デュオ・・・きゃあぁ？！〉


『ヒルデ？！』


　カーンズが差し向けた部隊は案の定、何の手傷も与える事も出来ずにゴミと化しつつあったのです。


『デュオ！行って下さい！！』

『け、けどよぉ？！』


　それも、カトルが珍しく・・・も無いか（コラ


『早くっ！！！後は僕達で何とかしますっ！！！』

『えーい済まねぇ！頼んだぜぇ！！』


　声を荒げて救援へと蹴り出した通り、最早デュオ抜きでも殲滅は時間の問題レベルまで情勢は落ち着いて居たのですから。




『ま、負けるもんか・・・あっ・・・や、やられるもんか！このデータを、デュオ達に届けるんだ、絶対に・・・やられるもんか！』


　唯、死神の獲物を横取りせんとした不届き者を颯爽と・・・は中々いかないもの。


『ヒルデ、生きてるな』

『う・・・な、何とかね・・・』

『・・・下がってろ！こいつ等の相手は俺はする！！』


　普通に向かって来る相手であれば、例えガンダムだろうが後れを取らない程度にはMDヴァイエイトもMDメリクリウスも動くもの。


『な、何だこいつ等？！モビルドールのくせに何でこんなに強いんだよ？！』

『デュオ！』

『お？！』

『あ、あのモビルドールには、ガンダムのパイロットのデータが組み込まれているの・・・』


　攻防の機能を分割した原型機に従った、的確なコンビネーションは。


『な、何だって・・・っ？！ひ、ヒイロに、トロワか？！』


　確かにデュオを手古摺らせはしたものの、所詮はそこまで。


『くうぅ？！おいおい冗談じゃ無いぜぇ？！これじゃああの二人を一片に相手にしている“様なもん”じゃねえかよ・・・！！』



　デスサイズヘルの機能を最大限に活かす事が出来るデュオであれば、多少ゲタを履いた人形如き何とかなる。


『だがなぁ？！』


　無論それは斯様に“両名”を仕上げたプロフェッサーGの腕の見せ所と言うもの。
　他でも無いプラネイトディフェンサーを参照した、デスサイズヘル前後のアクティブクロークはヴァイエイトの砲撃すら弾き切るもので、バックパックをも含めた急所を完全カバー。


『どんなに上手く真似しても！』


　そしてそんな重装甲が脱落しない程に強固に保持されているものであり、モビルスーツ一機を弾き飛ばす程のパワーすらある。
　・・・そして斯様な形で虚を突かれた後では、モビルドールで直ぐ立て直し等出来ず。


『所詮は御人形さんなんだよ・・・』


　背部から迫ったヴァイエイトは見もせず鎌の錆とした後は。


『人形如きに負けてて！ガンダムのパイロットが務まるかぁぁぁ！！』


　超出力の刀身でプラネイトディフェンサーを斬り捨てながら、本体のメリクリウスも切り刻んであの世に送って魅せております。


『今度造る時は、俺のデータを組み込むんだな』


　正しく死神の面目躍如もかくやな奮闘ぶりで在り、ドロシー的には大満足・・・カーンズは真っ青になっておりますがね（汗




『な、何で・・・何でそんな無茶な真似を・・・』

『だって私、そうしたかったから』

『あ・・・あぁ・・・こ、この馬鹿野郎がぁ？！』

『えへへ、そう言うだろうって・・・思ってたわ・・・』


　最早辿り着いた頃には満身創痍のヒルデではあったものの、彼女が齎したリーブラの仔細は、以降の戦いに極めて良い影響を与えてくれたものですが、それよりもリリーナの存在が知れた事の方が割と重大。


『・・・ヒイロ』

『ん？』

『リリーナ・ピースクラフトはリーブラに居るそうだ』

『リリーナが？！』

　彼女の存在を鑑みて、いよいよヒイロは派手に動き回る事となります。


『ああ、あの中でヒルデが出会ったらしい』

（・・・リリーナ・・・）


　尚そうこうしている内に、遂に二大勢力の会戦と相成るものですが、地球側の先陣に立つ白亜のモビルスーツは、何とトールギス！


〈ヒイロはリーブラに潜入し、リリーナと共にゼクスの元へ急ぐ！一方トレーズは、数千の機甲モビルスーツ部隊を率いて出撃した・・・〉


　コルシカの本体以外に各地にあったパーツを用いて完成した「トールギスII」を、平然とトレーズは乗り回しておりますが・・・一応これでも“未完成”であったと言われて居ます。


〈決闘による決着を望むトレーズに対して、ゼクスはホワイトファングのミリアルドとして、騎士道を否定した回答を選択するのであった〉


　資源衛星級も蒸発させ得るメガキャノンや、エピオンと近似したヒートロッドを要した所謂「III」仕様に関しては。


〈新機動戦記ガンダムW第46話「ミリアルドの決断」〉


　調整不足で間に合わなかった為、もう２年後にゼクスが用いる羽目になったりもします。